純チタンと軟鉄の丸棒一体鍛造とは?
腕前を問わず、マッスルバックアイアンに対して、ゴルファーには特別の憧憬があると思います。喰いつくような厚みのある打感はもちろん、高い操作性と難しさ。そんな機能面はもちろんですが、キャディバッグに入ったときの存在感というか、風格と気品を感じさせる佇まいは、ゴルフクラブの中でも別格のものがあるでしょう。
そんなマッスルバックの良さを最大限に活かしつつ、やさしさを盛り込みたいというのが『C01』アイアンのコンセプトでした。飛距離や許容性を増すことはそれほど難しいことではないのですが、それによって、マッスルバックの良さである打感や操作性が損なわれては意味がありません。ゴルファーが見て、「カッコいいな」と感じてもらえて、それでいて使うと見た目以上にやさしい、そんなアイアンを目指しました。
そのために採用したのが、純チタンを内蔵した「丸棒一体鍛造製法」です。これはその名の通り、軟鉄丸棒素材のなかに純チタンを埋め込み、硬さも性質も異なる2種類の金属が一体になった状態で鍛造する製法です。アイアンヘッドの中に、比重の軽い純チタンを25gも入れることによって、重量を周辺に配分し、重心位置もより深くすることで、ミスへの寛容性を高め、ボールを上がりやすくしています。
これはゴルファーの皆さんに、実際に想像してみていただきたいんです。この製法では、純チタンが中に入った軟鉄の丸棒を高圧でプレスして、アイアンの形状に仕上げます。その際、ヘッドの中に入っているチタン素材は、ゴンッと鍛造したその際に、位置や肉厚を寸分狂わず成型するのです。例えば、打感を損なわないために、フェース側軟鉄部の肉厚はしっかりと確保していますが、それらの厚みがすべて設計値通りに仕上げられます。これは超絶的な製造技術が必要になります。
最近では、軟鉄ボディに異素材をインサートして、フェース部材でフタをする方法や、パーツ別に分けて成型し、まとめて鍛造する方法などを使って、性能を出しているアイアンが増えてきました。しかし、この丸棒一体鍛造で作られているのは、今のところ世界でも『C01』アイアンだけです。それだけ技術的に困難な製法だということなんです。
実は2000年代にインナーチタンに挑戦したアイアンは過去にもありました。当時のチタンの量はわずか6g。性能が十分に発揮できない上、硬いチタン部分によって打感も悪くなりました。そのためプロからも支持されることはなかったのです。設計コンセプトがよくても、クラブとしてのバランスを保ったり、それに必要な製造技術がなければ、やはり良いクラブを作ることが出来ないということでしょう。
『C01』アイアンは、既存のマッスルバックアイアンと比べ、ややヘッドが大きくなり、実際にハーフキャビティと同等の許容性を持っています。チタンを内蔵する番手(#5−#7)と軟鉄一体鍛造(#8−PW)の番手で、より軟らかいS20C軟鉄とS25C軟鉄を使い分けて、セット内での打感と打音に統一感をもたせています。このあたりのこだわりは、アイアンセットとしてのクラブの出来を決定的に変えるところなんです。
『C01』は、世界でも例のない高度な製法と我々『PROTO-CONCEPT』の設計思想が結晶し、これまでにない最高のアイアンが出来たと自負しています。マッスルバックに憧れを持つ多くのゴルファーにぜひ手にとってもらって、新世代の新たなマッスルバックアイアンの真価を感じていただきたいですね。
『PROTO-CONCEPT』 ブランドプロデューサー
川崎康史